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■ 六ヶ所村
■ 遠田秋月堂
御所大神宮縁起

朝、岡部のような高いところをのぼって、東海山大乗寺という浄土宗のお寺の 哲誉上人に会った。この寺の門前は谷越しに橋を掛け渡して、そこに清らかに みずが流れていたが、そのありさまは格別であった。この谷水のほとりに、 御所大神宮というささやかな祠がある。人に尋ねると、

「昔、何と申すのか名は知らないが、一人の宮様が、どのような罪でか ながされて来られ、ここに住んでおわしました。その宮の御館をところの人は みな御所の宮と申し上げた。宮が亡くなるとそこに塚を築き、宮の御亡骸を おさめて、めのと(乳母のことだがここでは乳母の子か)小藤太というものが 花を折り、水を奉って、亡き霊を祀って年を過ごしていた。

ある年の事、「この浦の家は残りなく大波に打ち壊され、人も大勢命を失うだろう、 早く逃れよ」と宮の確かな夢のお告げがあったので、そのお示しの通り、人々は この高い丘に逃げ登ってその日を待った。おおせに違わず津波が押し寄せてきた。

この確かな証をみてから、浦人は恐れ尊んで、御塚を神として祀り、社を建てて、 御所宮と祀ったが、私を始めもの知らぬ漁師、木こりらが、御所大神宮とわけも わからずに崇めまつり奉っている。そのほかにも御神の霊験のいちじるしいことが 多かった。木村小藤太の子孫は、いまもこの神にお仕えしている。その家には、剣、 太刀がさびながら残っているが、それを遠い先祖の持っていた宝として尊んでいる。」
と語った。

菅江真澄遊覧記 寛政五年十二月一日より